『天駆ける兎』       
                     by yuuji


 物心ついた時からこの大地が俺のすべてだった。
 数十歩走ると柵があり、金網に囲まれたこの空間が少年期だった。
 ある目突然、足に怪我を負ったかわいい仲間が連れ込まれて来た。聞けばワナにはまり丸焼きで食べられてしまうところ小さく細かったため、ここに入れられたとの事。あの食料と水を運んで来てくれる少女が「俺達を食べる?」

 それから毎日、アイツは外界のめずらしい世界を話してくれた。同時にこのかこいの中がいかに安全で満ちたりだ空間であることを強調するのであった。 
 しかし、聞けば聞くほど俺の好奇心と冒険心はふくらみ、「いつか俺は外界を自由に駆けてやる。」

 好きな相手が居ようとも外界の自由を願わなかった日がなかった俺は余隅のささくれた場所を一所懸命に掘り続けた青年期であった。
 そして満月の夜実行。 
 云えば止められるであろう。語れば涙があふれるであろう。
 アイツが突然やって来たように俺は今夜居なくなる。消えてしまおう。昨日までの安定した延長より、自由な明日が「俺には必要なんだ。」

 広い。どこまでも続く大地を毎日走った。
 ひたすら走った。
 疲れて立ち止まれば、俺より数百倍小さな虫におどされ、ロにした葉で高熱を発した日もあった。 時として大きな動物や空からの鳥に襲われ、外界におののく日が続いた。
 ジイが言っていた『宿命を背負い運命は切り開かれど天命には逆らえぬ』とは何かを自問する日々に安息はなかった。

 さまよい続けて立ち止まった目の前にあいつが言っていた『紫の華』 もう一度食べてみたいと言い続けていた一輪の花。きっとあの花に違いない。迷わず一ひらロにし、そのエキスが体内に廻った時。何かがはじけた。

   「そうだ、この花をアイツにとどけよう。
    アイツに食べさせたい。行こう。アイツの元へ帰ろう」

  走る。ひたすら走る。がむしやらに走る。
  一輪の紫の花をロにくわえ走る兎。 
  愛に導かれ、愛に向って『天駆ける兎』


       その兎は目を閉じると見える人々によって、一羽二羽
       と喩えられ数えられるよう噂話が広がっていった。 
       そして、その兎は月までも駆けて行ったらしいtosa



 今夜はスーパームーンの満月です。 スッキリした夜空に素顔を見せてくれるでしょうか?



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