『泳げぬヘンビー』     by  遊児


 ある村はずれにその家族は楽しく暮らしておりました。
 「ヘンビー」と名付けられた子の疑問です。

 「ねぇ、とーちゃん。 昨日オイラが気持よく昼寝をしていたら、シャワーが降ってきたんだ。慌てて眼を開け避けようとしたら、犬のションベンだったんだ。オイラが居るのに気づかずにー」
 「バカな奴だなぁ。フグリに噛みついてやればいいんだ」
 「ヤダよ。あんな毛むくじゃら」
 「オマエに気がつかないノンビリ犬は間抜な奴に違いない」
 「でも、オイラも立ちションしてみたいナー」

 「ねぇ、かーちゃん。 バッタさんに会ったら、あの細い足でピョンと一跳びで逃げて行ったよ。そして、蝶さんもあの大きな羽で大空へ飛んでいったんだ」
 「みんな私達が怖いんですって。何にもしないのにね」
 「ねぇ どうして?」
 「ムカデさんなんかよく足を絡ませているではないか。テントウムシなんか硬い外羽まで背負ってさー」
 「ねぇ どうしてなのー」
 「手や足がない私達の容姿が進化の究極終着だからなのよ」

 その夜、ヘンビー君は夢を見た。
 人間になって旅をしていた。
 醜い戦争を見た。
 餓えて死んでいく子供を見た。
 食べきれない料理を前にドンチャン騒ぎをする平和ボケをみた。
 火を操り、手で道具を造り、足でどこへでも出かける人間の浅ましさをヘンビーは体験していたのであった。

 「やっぱり、オイラは『蛇』でよかった」 と目覚めた。

 「おはようヘンビー 今日は海の中で暮らす伯父さんちに行くぞ」
 「エ? 海に行くのー オイラ泳げないんだ 怖いよ~」



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