鳴海風著「和算の侍」は江戸時代の和算に憑りつかれた奇人を書いた短編小説です。
 「円周率を計算した男」のほか5編について書きたい。

   「初夢  天才数学者、久留島義太」
 銀座役人一家家族と大酒飲みの義太の奇妙な師弟関係。
 算額の問題を創ることは苦手ながら解く能力がバッグンだった義太は長年浪人暮らしであった。一人暮らしの気楽さかその荒れた身なり等無頓着であった。 しかし、仕官が決まったにも関わらずだらしない生活態度は治らなかった。
 借金取りに追われる大晦日のひと悶着も無事解決し、「人間には百八つの煩悩があるそうだけど、煩悩に惑わされず努力していたことは、神様はお見通しだったねぇ。お前さん、きっといい初夢が見られるよ」とさりげない当たり前の一言で終わってました。

   「空出  大名数学者、有馬頼徸」
 まずは筋書の前に。
 臥煙(ガエン)という江戸城の見付の警固にあたった身分の低い者で火消しの鳶(とび)集団が久留米藩に600人も抱えられておりました。 その久留米藩の有馬家8代が有馬頼徸であり、和算に興味を抱き、秘伝と称した算学を積極的に公開した革新的人物だったのである。
 ガエンから侍に取り立てられた清七郎は殿の反勢力からの襲撃に対し、半鐘を鳴らしその危機を救った物語でした。
 としか書けないが、淡い恋心と未練や身分制度を飛び越した主従関係が短編ながらコンパクトにまとまってました。
 (矢的竜著作の「折り紙大名」を読んだことを思い出しました)

   「算子塚  関流に挑んで数学論争、会田安明」
 まずは、江戸時代に関考和を祖とする和算の流派は数学の方程式を秘伝と称して広く公開しませんでした。その一方で難かしい問題を算額にして神社に奉納する庶民が現れたり、問題を解く手がかりを本として出版したりと実利を超えた数学ブームが巻き起こりました。
 出羽で中西流を学び、江戸の親戚鈴木家の養子に入り、関流に対抗する最上流の創始者となる安明が一人の女性を奪い合う親友との葛藤が原点であり、その執念の結果であった。なんての話です。 ですが、愛宕山での数十年ぶりの友との再会が意外な結末を迎えます。
 (安明の算子塚を見に行ったのは2010.03.14だった)


                    明日につづきます。 



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