2017.03.21  蜜蜂乱舞
 吉村昭 (著) 『蜜蜂乱舞』 を読み終わりました。

 まず小説の時代背景。
 ゲバ棒を持った安保・大学紛争が収束に向かい、大阪万博が開かれた70年代です。 一部に蒸発や挫折屈折があろうと一様に明るい未来の到来を謳歌し始めておりました。

 養蜂と蜂について。
 古来より蜂の巣を管理し蜜を採取して生計を立てている農家が居た。
 定置養蜂家と全国に移動して採蜜する移動養蜂家がいます。
 育てる蜂はニホンミツバチなのだが近年西洋蜜蜂が主流です。
 蜂の社会は女王蜂・メスの働き蜂・交尾のみのボンクラ雄蜂。
 (成虫の寿命は、女王蜂が1-3‐5年、働き蜂が最盛期で15-38日、中間期は30-60日、越冬期が140日、雄蜂は21-32日)
 女王蜂はローヤルゼリーのみを食べひたすら子孫を残します。
 働き蜂は花の蜜を求め、ひたすら飛び回ります。
 交尾のみ?と優雅なヒモ生活を送るオスだが寿命は短く、さらに冬が近づくと強制的に殺されるか巣箱の外に追い出され凍死です。


 太平洋戦争の特攻基地であった九州・鹿屋も復興を遂げ、養蜂農家にも新たな春がきた。
 東京の大学を中退して行方知れずになっていた長男が、女を連れて戻ってきた。彼女とは、4日前に結婚したという。養蜂一筋に生きてきた伊八郎の心は、喜びと憤りで大きく揺れた。一家は花を追って、日本列島を北上するトラックの旅に出るが…。旅先で遭遇する事件や人間なるがゆえの葛藤を、雄大精妙な自然界の摂理を背景に追求した作品。

 毎年のことながら、子を残し旅立つ一家。 今年は長男夫婦が同行するがどこまで就いてこれるか?一抹の不安な移動であった。

 巣箱のトラック移動。
 蜂は振動や温度変化を嫌います。 ひとたび蜂がパニックに陥ると羽を集団で高速にバタつかせ、結果巣箱内温度上昇により、蒸死してしまいます。そのため、ユックリ走らせ止まらないよう移動します。ガソリン補給やトイレもそこそこに食事も車内です。

 7ヶ月の移動旅はいろんなことに出くわします。
 旅先で女ができ、故郷の家族を捨て、逃亡することも珍しくなかったそうだ。

 日頃ダンディーだった男が数年前に居なくなった。
 偶然、見かけた似た男はヨレヨレの作業員になっていた。
 聞けば、女とも別れここでヒッソリしているという。
 帰ってこい。と説得するが・・・ 次の展開が吉村らしい小説です。
 実は女を殺し、シナノキの下に埋めていたのだった。 伊八郎に遭って自首する決心がついた。

 数ページのくだりだが、オーバーに飾ることもなく、淡々と。 こんな書き方がオイラは好きだ。

 スズメバチやクマなどの天敵からの防衛。
 攻撃性の強いスズメバチ(数十匹ほどのオオスズメバチがいれば4万匹のセイヨウミツバチを2時間ほどで全滅させられる)には蜂球となりバタつかせた羽の熱で窒息蒸死させるのだが当然蜜蜂のかなりの損害を被る。

 一家は鹿児島・宮之城から松本から十和田市、北海道・十勝へ。
 11月に越冬蜂を貨物列車で鹿屋へ送るのであった。

 「ねぇー 典子も17ですよ。 清八(住み込みの弟子)と結婚させ独立させてはどうか・・・」
 妻の言葉に動揺する伊八郎の父親らしい葛藤が微笑ましい。


 個人の養蜂家が減る中において、日本で最大規模の養蜂家のネットワークに成長させた山田養蜂はTV等の通販最大手に成長してます。
 また、銀座や原宿では東京都心ハチミツを生産加工していたり、個人でも趣味に養蜂したりと、天然・自然がジワリ注目されております。


 半世紀近く前の小説ですが、先人の苦労と努力、そして、受け継がれる「農の力」を学びました。 知って役に立つこともないだろうが明日の糧にはなることでしょう。



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